ことばの発達(発語編)~「初語」はいつごろ? どんなことばが多いの?

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初語

赤ちゃんの初めてのことば、「初語」が出る時期って、いつごろだと思いますか? 

子育てを経験した人にお子さんの初語がいつごろだったか聞いてみたら、早い例で6カ月、遅い例で2才近くでした。 案外多いのは「いつが初語だったのかよくわからない」という声。実はうちもそうでした。「あった」と聞えるのですが、ことばなのか、まねなのか、意味がわかっているのか微妙でした。判断が難しいことってありますよね。

初語が出る時期や、初語に多いことばについて調べてみました。

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1才前後に出る初めてのことば

初めて話した意味のあることばを「初語(しょご)」といいますが、赤ちゃんが話し始める時期は、言語の違うどこの国でもだいたい1才前後だそうです。歩き始めと同じく、1年がかりで達成する大プロジェクト。ヒトをほかの動物と隔てる2大特徴、二足歩行とことばが同じころにできるようになるなんて、おもしろいですね。

初語が出る時期を発達検査法で調べてみました。 遠城寺式乳幼児分析的発達検査法は、昭和33年発表(昭和49年改訂)と、いちばん古くからある発達検査法。発表当時の赤ちゃんはもはやおじいちゃん、おばあちゃん世代ですが、今でも発達年齢の評価に使われています。

ここでは「ことばを1、2語正しくまねる」ことができる月齢を11カ月、「2語言える」月齢は1才1カ月、「3語言える」月齢は1才3カ月となっています。目安としては50%ラインだと思います。「1語言える」がないですが、最初のうちは「まねる」と「言う」の境目があやふやで、私みたいに迷う人が多いからかも。

発達の指標としてよく使われるのが日本版デンバー式発達スクリーニング検査。第一版(1980年)は東京都、沖縄県、岩手県での調査結果を反映させて作られているそうです。原典が手元にないので孫引きですが、90%の赤ちゃんが「意味のあることばを1語いう」ようになる月齢は、女の子が14.1カ月、男の子が14.8 カ月。男女差がありますが、1才2カ月までには9割の子が話していたというのが当時の認識だったようです。

遅くなっている「初語」の月齢

初語が出る月齢は、ここ30年間でずっと遅くなっています。

厚生労働省が10年に1度行う「乳幼児身体発育調査」では、1語話すようになった時期を調査しています。平成22年度版の資料グラフに、平成12年度版のグラフの一部を重ね合わせて、平成2年度、平成12年度、平成22年度で比較したグラフを作ってみました。ちょっと見苦しいのですがわかるでしょうか。90%の月齢、75%の月齢がわかるように印を付け加えてあります。

初語統計 変化
グラフを見ると、10年ごとに初語の出た月齢が遅くなってきているのがわかりますね。90%の赤ちゃんが達成している月齢が平成2年ではおよそ14.5カ月だったのに対して、平成12年では15.5カ月、平成22年では17カ月近くになっています。

祖父母世代と親世代はあまり差がないようですが、今の赤ちゃんたちはかなりの差があります。赤ちゃんのことばを育てる環境が急激に変わってきているのでしょうか。

実際、「発達障害の子が昔よりも増えている」とか、「昔とは違うタイプのことば遅れがある子が増えている」と指摘する専門家もいます。発達障害は最近になって研究が始まった部分も多く、昔と比較するのは難しいところもあります。ことばは人と直接やりとりしながら育っていくもの。テレビやCDなどの見せすぎ、聞かせすぎで、親子の会話が減ることの影響を心配する声も強いようです。

発達定型児でもややゆっくり

2012年の新潟医療福祉学会の学会誌に掲載された「初語の意味内容と表出時期について(吉岡 豊,土佐香織)」という論文に、保育園児の養育者に聞いた初語についてのアンケート結果が掲載してありました。

論文 初語この調査は、保育園児の中でも発達には問題がないとされている子どもが対象なので、広範囲にさまざまな子が含まれている統計とは少し違いがあります。この分布図を見ると、生後10カ月以前に初語が出た子も15%くらいいるようですね。

話し始めの平均は12.7カ月、90%を超えるラインは1才3カ月よりも少し後くらい。これを見ると、発達に問題がある子が増えたから統計上遅くなっただけとも言えないようです。全体的な傾向として初語の出る時期が30年前よりも遅くなっているのかもしれません。

最初に出ることばランキング 

「定型発達児と言語発達障害児における初語の調査(吉岡 豊,土佐香織)」に掲載されていた初語の分類表を引用します。

引用 (「定型発達児と言語発達障害児における初語の調査(吉岡 豊,土佐香織)」)

定型発達児に見られた初語の分類

分類基準  家族  食物  オノマトペ  一般名詞  その他

語数 

97   56   19   14   8
(%)  50%  28.9%  9.7%  7.2%  4.2%
最頻度語 ママ  マンマ  ワンワン

(%) 

58.8%  100%  47.3%

194語の初語のうち約半分が家族を表すことば。その6割近くが「ママ」でした。食べ物はすべて「マンマ」でこれも3割近いので、「ママ」「マンマ」で6割弱。どちらも身近なことばですし、赤ちゃんにとって「マ」は発音しやすい音なのでしょうね。一般名詞の例としては、はっぱ。その他の項目にはあいさつや場所などが含まれていたそうです。

 NTTコミュニケーション科学基礎研究所が発表した、初めて話すことばの上位50語のうち、20語を紹介します。原本を探したのですが、みつかりませんでしたので、2008年のマイナビニュースから引用します。

このデータは、2008年当時、gooベビー会員向けサービスにあった、赤ちゃん成長ダイアリーに記入してもらったことばから収集したものです。ちっょと横道にそれますが、当時赤ちゃん成長ダイアリーの記録からは、子ども語辞書というおもしろいコンテンツも作られていました。会員向けサービス終了のタイミングだったか、非公開になってしまいました。残念です。

1位 まんま(ごはん)  

2位 おっぱい  

3位 いないいないばあ

4位 ママ  

5位 はーい(返事)  

6位 ワンワン

7位 ねんね

8位 パパ

9位 バイバイ

10位 よいしょ

11位 どうぞ

12位 お母さん

13位 お父さん

14位 ニャンニャン

15位 くっく(靴)

16位 ある、あった

17位 痛い

18位 ないない(片付ける)

19位 バナナ

20位 ブーブー(車)

「まんま」が堂々の1位です。発音もしやすいし、使うシーンも日常的にあることばなので、納得できます。しかし、ママがまさかの4位。おっぱいはともかく、「いないいないばあ」が3位でママより上とは予想外でした。

「いないいないばあ」の遊びが好きな赤ちゃんなら、何度も繰り返す機会があるし、まねてことばになりやすいのでしょう。8拍もある長いことばですが、テレビ番組の影響もあるようで、最初から「いないいないぱあ」としゃべったという話も聞いたことがあります。中には、ママが「いないいない」と言ったら、赤ちゃんが「ばあ」と応えたとか、一部だけを話したのも含まれているかもしれませんね。

「お母さん」「お父さん」もそろってランクイン。こちらも、そのまま発音しようとすると、赤ちゃんにはかなり発音が難しいことばです。たとえば「お母さん」には、「おか」とか「かか」「かーたん」みたいに、赤ちゃんのアレンジ語が含まれていそうです。

初語は名詞が多いという思い込みがあったのですが、動詞もあれば形容詞もあって、バリエーション豊か。ほかでもいろいろ探してみたら、「もっと(おかわりちょうだいの意味)」「ちゃ(お茶ちょうだいの意味)」などの要求系、「アンパンマン」「へんしん(変身)」などのメディア影響系、ペットの名前、「しぇんしぇー(保育園の先生)」「○ちゃん(ママのニックネーム)」、近所の店の名前などの変形名前系。思いもよらないことばが初語だったという例もあるようです。

初語はまだという赤ちゃんだって、ママたちが予想外のことばをすでに話しているのかも?

参考

発達スクリーニング検査~国立特別支援教育総合研究所

 遠城寺式乳幼児分析的発達検査法

遠城寺式乳幼児分析的発達検査法 池田町保育園入園および在園児審査委員会細則

「平成22年乳幼児身体発育調査の概況について」

「平成12年 乳幼児身体発育調査報告書」

初語の意味内容と表出時期について(吉岡 豊,土佐香織)

 定型発達児と言語発達障害児における初語の調査(吉岡 豊,土佐香織)

マイナビニュース

NTTコミュニケーション科学基礎研究所

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