「 夜泣き 」にアプローチ【睡眠の仕組み編】~日本の赤ちゃんだけ夜泣きするのはなぜ?

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生まれて半年くらいたつと、あやすと笑うようになり、寝返りやずりばいもできるように。育児にも慣れて、赤ちゃんとの暮しが楽しくなってきますね。でも、このころから始まる大きな問題が・・・。そう、「 夜泣き 」です。

夜中に突然目覚めて泣きだす赤ちゃん。抱っこする、添い寝する、おっぱいを飲ませる、ドライブに行くなど、ママの対応はさまざま。できれば対処法ではなくて、直接「 夜泣き 」をなくしたいですよね。

原因や対策を考える前に、まず睡眠の仕組みについて知ることから始めてみてはいかが。ヒトはどうして眠くなるのか、そして赤ちゃんの眠りは大人とどこが違うのか、まずはそこから「 夜泣き 」にアプローチしたいと思います。

※すぐに原因と対策を知りたい人はこちら 

「夜泣き 」にアプローチ【原因&対策編】~「放置がベスト」「鉄分補給で改善」ってホント?  

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「 夜泣き 」するのは日本の赤ちゃんだけ

夜泣き

早い子は生後4カ月、一般的には生後6カ月過ぎから増えてくるのが「夜泣き」。はっきりした理由がないのに夜中に突然泣き出して、なかなか泣き止まない日が続きます。毎晩泣かれてしまうと、ママもパパも睡眠不足になってしまいますね。なによりつらいのは、どうして泣くのか原因がわからないこと。泣き止ませる方法を手探りしながら、嵐が過ぎ去るのを待つしかないようです。

赤ちゃんは、もともと眠るのがとっても下手。眠りにつくときのあの頼りない感じ、意識がなくなっていく感じに慣れていないから、どうしていいかわからなくて、機嫌が悪くなるのだといいます。ぐずってばかりで眠ってくれない、寝かしつけの悩みは万国共通のもの。

しかし、毎晩、夜中に起きて泣き出す「夜泣き」は日本特有。赤ちゃんが夜に泣くことくらいあるでしょうけど、欧米にもアジア諸国にも日本のように、半ば習慣化した「 夜泣き 」はないようです。日本では、なぜ「 夜泣き」する赤ちゃんが多いのでしょうか。

3歳以下の子どもの1日の総睡眠時間の国際比較
出典:子どもの夜ふかし脳への脅威  三池輝久著 、集英社新書

実は、日本の赤ちゃんにはもうひとつ、睡眠に関する大きな問題が指摘されています。それは睡眠時間の短さです。

2010年、イスラエルのアビ・サデー氏らが、世界17カ国で0~36カ月の赤ちゃんの睡眠時間を調べたところ、日本は最も短く1日当たり11時間17分。諸外国より約1時間も短く、最長のニュージーランドとは1時間40分もの差があったそうです。

また日本小児保健協会が実施した「平成22年度幼児健康度調査」によると、1歳~1歳6カ月未満では21時台に就寝する子が43.8%と最も多く、22時台で19.9%。21時より前に就寝している子は22.1%という結果になっています。欧米諸国と比較すると、かなり遅い時間です。別の研究では、就寝時間は睡眠時間との関係が深く、2カ月からの赤ちゃんは20時までに寝ると長い時間眠れるというデータがあるそうです。(参考 愛育ねっと「乳児における夜間の就寝時刻が最長睡眠時間の長さに及ぼす影響」)

欧米と日本とでは、眠りの文化や環境が違うので、単純に比較できませんが、睡眠時間の短さや就寝時間の遅さという特徴は、日本の赤ちゃんがしっかりと眠れていないことを示唆しているように思えます。その問題が、日本特有の「夜泣き」にも関係している可能性はありそうですね。

それにしても、ヒトはどんなきっかけで眠くなるのでしょうか。熟睡するにはどんな環境が必要で、何が安眠を妨げてしまうのでしょう。眠りの仕組みについて調べてみました。

ヒトの睡眠に関わっている3つの仕組み

ヒトの睡眠には3つの仕組みが関わっています。そのうち2つは眠る時間帯やタイミングをコントロールする仕組み。残りの1つは脳を働かせるために睡眠を抑制する仕組みです。

1) 内時計機構

私たちは朝になると自然に目覚めて、夜になると眠くなります。時間軸で眠りをコントロールしている仕組みが体内時計機構。体内時計は、いろいろな臓器に備わっていて、およそ25時間と、24時間よりも少し長い周期で、1日の生体リズムを刻んでいます。時間帯によって体温や血圧を変動させたり、必要なホルモンを分泌させたりといろいろな働きをしています。体内時計のタイマーは、朝の光を浴びるとリセットされて、時間のずれを調整する仕組みになっています。

体内時計の仕組みの中で、睡眠のきっかけになるのはメラトニンというホルモン。ヒトの深部体温を下げたりして眠くなるように働きかけます。メラトニンは朝の光を浴びてから14~16時間くらいたつと分泌量が増えて、夜中がピーク。明け方になると分泌量は減少していきます。ただし、夜間でも光を浴びていると、メラトニンの分泌が減って眠りにくくなります。

2) 恒常性維持機構

徹夜明けやたくさん勉強した後など、疲れていると時間帯に関係なく眠くなりますね。それは起きているときに作りだされる睡眠物質がたまってきたしるしです睡眠物質はいろいろな種類があり、身体のあちこちで作られますが、増え過ぎると脳が働かなくなります。眠ると睡眠物質の生産は停まり、睡眠中に分解されて身体を疲れる前の状態に戻すことができます。たまった睡眠物質の量によって、眠る時間や深さが調節されています。

このように、疲労回復や細胞の修復に関わって、身体の環境を一定の状態に保つように働きかける仕組みのことを恒常性維持機構といいます。体温や脈拍、血圧、血糖値なども運動などの影響で一時的に変動します。しばらくすると平常の状態に戻るのは、この恒常性維持機構の働いて修復しているからです。

3) 覚醒維持機構

目覚めている間は、覚醒維持機構が働いて脳が活発に活動できる状態を保っています。この仕組みの調節に関わっているのはオレキシンという神経伝達物質。日中はたくさん分泌されますが、夜になると分泌量が少なくなります。

オレキシンは脳のスイッチをオンにし続ける作用があるので、分泌され過ぎると眠れなくなり、不足すると起きていられなくなります。夜間でも、起きていたいという意思が働くときに分泌されています。

時間や場所を問わずに、急激に眠くなる発作がおきるナルコレプシー (narcolepsy) という病気を聞いたことがありますか? この病気の原因はオレキシンの欠損。またカナダで発表された最新の研究では、SIDS(乳幼児突然死症候群)の原因も、オレキシンの不足と関係していることが判明したそうです。

参考 日本大学医学部付属板橋病院 睡眠センター

レム睡眠が多い赤ちゃんの眠り

睡眠に、ノンレム睡眠レム睡眠という2つのタイプがあることは、よく知られていますね。赤ちゃんの眠りは大人よりもサイクルが短く、レム睡眠の割合が多いのが大きな特徴です。

ノンレム睡眠は大脳をしっかり休ませる眠りで、脳も体も休んでいる状態です。脳は働いていませんが、筋肉は動かすことができて、無意識に寝返りをうつことができます。レム睡眠は、身体は眠っていますが、脳の一部は起きていて情報整理をしたり。レム睡眠の間は、眼球がよく動いていること、筋肉が弛緩していて力が入らないという特徴があります。

大人の場合、90分から2時間くらいの周期でノンレム睡眠レム睡眠を繰り返しています。最初のノンレム睡眠がもっとも深い眠りで、何回か周期を繰り返すうちに眠りは浅くなっていきます。睡眠中、約8割くらいがノンレム睡眠です。

新生児は睡眠の周期がかなり短くて40分ほど。睡眠時間の半分がレム睡眠です。生後2カ月ごろから体内時計が働くようになって、3カ月ごろには昼夜の区別がついてきますが、眠りの周期はまだ短くて50分ほどど。ノンレム睡眠とレム睡眠の周期が大人に近づいてくるのは、2才過ぎからといわれています。

赤ちゃんがちょっとした物音でも目覚めてしまうのは、眠りの周期が短くて脳が眠っていないレム睡眠の割合が多いから。赤ちゃんは大人よりも音や光、周囲の環境に敏感な時間帯が長いからこそ、熟睡できる環境づくりが大切なようです。

次回は、目覚めたときに泣きだしてしまう理由や、泣き止ませるために授乳など特別な対応が毎晩の習慣になってしまう理由を探っていきます。

まとめ
・日本の赤ちゃんには、夜泣き以外にも睡眠時間の短さと就寝時間の遅さという特徴があり、十分に深い睡眠がとれていない可能性がある。
・睡眠には、体内時計機構、恒常性維持機構、覚醒調整機構が関わっている。眠くなるためにはメラトニンや睡眠物質が必要。オレキシンが出ていると目がさえて眠れなくなる。
・赤ちゃんは大人よりも睡眠の周期が短く、レム睡眠の割合も多いので目覚めやすい。
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