赤ちゃんの あやし方がわからない。
とくに生後3カ月くらいまでの赤ちゃんを持つママに多い悩みです。
ベビ待ち中はかわいい赤ちゃんと暮らす日々を夢見て頑張ってきたのに、いざ育児が始まると、泣く、おっぱい、泣く、おむつ替え、泣く、抱っこ、泣く……。おっぱいとおむつ替え、合間に抱っこの無限ループ。抱っこ抱っこで手首は腱鞘炎に。
「思ってたんとちゃう!」「うちはどげんしたらよかと?」「おみゃーさん、たーぎゃあにしとかなあかんって」………なんて、赤ちゃんに言っている人がたくさんいるんじゃないかと思います。
今回は抱っこに注目して、あやし方のヒントを紹介します。それぞれに、いいところがあれば気をつけたいところも。お節介ですが、気がかりな情報も一緒にお届けします。
目次
あやし方その1 おくるみ抱き(おひなまき)
新生児から1カ月ごろの赤ちゃんを寝かしつけたいときにおすすめです。ちなみに「おひなまき」はおくるみの商品名。それが通称になったみたいです。
方法 おくるみを使って、両腕両足が出ないように包み込んで抱っこします。背中を丸める姿勢を保つ包み方、足をM字型に開く包み方など、バリエーションはいろいろ。手持ちのおくるみや布に合わせて工夫してみてください。ただし、手足の自由を妨げないよう気をつけて。
Point 狭いおなかの中で羊水に包まれていた赤ちゃん。とくに新生児のころは、肌に何も触れない裸の状態や手足がのびのび動く環境に慣れないようです。体を包まれて軽く圧迫されている方が落ち着く傾向があります。布団に寝かせるときなどにモロー反射がおきると目を覚ましてしまう赤ちゃんには、手足を包んで動作を抑制して起こさないようにする効果が期待できます。(モロー反射についてもう少し知りたい方はこちら)
ここに注意!! 足を伸ばしたままの状態で包み込んで固定させてしまうと、股関節脱臼の原因になります。ここがいちばん心配です。この時期の赤ちゃんの足はカエルのようなM字型に開いているのが基本です。自由に動かせるよう、十分ゆとりをもたせて包みましょう。海外で起きているおくるみブームに対して、股関節脱臼の危険性を警告する論文も出ています。(参考 「おくるみ」は赤ちゃんの股関節に悪影響、英論文)
グッズ おくるみとして市販されているのは新生児用で70㎝角くらいから、大きくても80~90㎝角くらいですが、海外の商品は120cm角とかなり大き目です。最近は巻きやすい形にアレンジしてある専用商品もいろいろ市販されていますし、手作りもできます。大判のバスタオル、ひざかけ、薄手のブランケットなどでも代用もできますよ。肌にやわらかい綿素材がおすすめです。
商品を薦めているわけではありませんが、包み方の例を紹介します。
参考 赤ちゃんのための手作りおくるみの作り方♡裁縫初心者でも簡単!
あやし方その2 C字型抱っこ(まんまる抱っこ)
「横抱きであやしていると体を反り返らせてしまう」「体をもぞもぞさせて落ち着かない」と、抱っこの方法に悩んでいたら、試してみるといいと思います。
方法 赤ちゃんの背中がCの字のような丸まった形になるように意識して抱っこします。片方の腕は首から肩、もう片方の腕はひざからおしりを支えます。赤ちゃんの身体をねじらせない、背骨を押さえないのがコツ。両腕で輪っかをつくって、その中に赤ちゃんの背中とおしりをはめこむようなイメージです。
まんまる抱っこを薦めている助産師の後藤裕子さんの動画です。※2分ごろの胸を支える抱っこは、生後3カ月の赤ちゃんにはまだ早いと思います。
Point ママのおなかにいるときは、ずっと背中を丸めていた赤ちゃん。低月齢のときは、背中をCの字に丸めた姿勢を取らせてあげると落ちつくようです。抱っこの方法としてはおすすめです。ただ、この姿勢を意識的にずっとさせることが発育発達にとてもいいとする説がありますが、それを裏づける医学的な根拠が不明なので疑問があります。
ここに注意!! 赤ちゃんの好みにあって、ママが少しでもラクできるならうれしいですね。でも、低月齢のころから縦抱きが好きとか、ぴったりと密着されるのが苦手とか、抱っこの好みがはっきりしている赤ちゃんもいます。「発育にいいから」と無理にこだわったり、うまくいかないと落ち込まないでくださいね。
☆「まんまる抱っこ」や「おひなまき」をしている人がよく使っているのがスリング。スリングは、転落事故、窒息事故、股関節脱臼の発症などの問題が報告されています。使う場合はスリングの危険性を知って、使用上の注意などもよく読んで安全に配慮しましょう。呼吸を妨げない姿勢を保つようにする(首が過度に前屈すると窒息事故につながります)、足をまっすぐに固定しない、赤ちゃんの顔が見えるようにするなど、十分気をつけましょう。
あやし方その3 ラッコ抱き
抱っこしていると機嫌がいいのに、布団に寝かせると泣いちゃう赤ちゃん。ずっと抱っこしていることに疲れたときは、ラッコ抱きがおすすめです。
方法 赤ちゃんを抱くラッコのように、仰向けになっておなかや胸に赤ちゃんを乗せる抱っこです。赤ちゃんを縦抱きして頭とおしりを支え、胸と胸をくっつけたまま、そっと仰向けに寝ます。うつぶせになった赤ちゃんの顔は横に向けます。衣服で鼻や口をふさがないように注意しましょう。ママの背中にクッションなどをあてて身体を斜めに保つと腰がラクですよ。
Point このころの赤ちゃんは仰向けよりもうつぶせのほうが落ち着きます。ぴったりと体をくっつけるのでスキンシップ効果があり、おなかや心臓の音などが聞こえてリラックスきます。ただ、おっぱいに近いので、赤ちゃんによっては興奮して落ち着かなくなるかも。 体の大きなパパにもおすすめのあやし方です。
ここに注意!! あやしているうちに赤ちゃんが寝てしまうこともありますね。うつぶせ寝は乳幼児突然死症候群(SIDS)のリスクが高くなります。ママやパパが抱っこしていれば、赤ちゃんに異変が起きても様子がすぐわかって大丈夫だと思いますが、眠ったら仰向けに寝かせたいもの。頭とおしりを抱っこしたまま体を回転させて、ゆっくりとおしりから着地させ、最後に頭を支えている手を抜いて寝かせます。(頭が急に落ちる動きをすると、モロー反射が出て目をさましがちです。)一度横向きに寝かせて、落ち着いたところで仰向けにする方法も。
(乳幼児突然死症候群について、もう少し知りたい方はこちら)
あやし方その4 抱っこで歩く
「当たり前」と言われそうですが、理化学研究所が科学的に実証した折り紙つきのあやし方です。
方法 赤ちゃんを抱っこして歩く。それだけです(笑)。戸外でお散歩しなくても効果はあるようです。理化学研究所が生後6カ月未満の赤ちゃん&ママを対象に行った実験によって、ママが抱っこして歩くと、赤ちゃんは心拍数が下がってリラックスした状態になり、泣く量が約10分の1、自発的な動きが約5分の1とおとなしくなることが立証されました。
Point ネコやライオン、ネズミなど哺乳類の赤ちゃんは「輸送反応」といって、親に運んでもらうときに邪魔にならないように、じっとおとなしくなるしくみみが備わっているのだそうです。振動や音などを体のセンサーがキャッチして「輸送中」と脳が判断すると、親に協力して危険を回避するため、運ばれやすいようにおとなしくなってくれます。ベビーカーでのお散歩やドライブ中、動いているときはおとなしいのに、止まるとぐずりだすことがありますね。あれも、身体のセンサーが揺れをキャッチして「輸送」されている、「輸送」は終わった、と判断して反応しているんでしょう。
ここに注意!! 3カ月くらいまでの赤ちゃんは、体を起こした状態で保つどころか、首で頭の重みを支えるのも大変。歩いているときに赤ちゃんの頭がグラグラしていないか、呼吸しにくそうにしていないか、縦抱きだったら、背中や腰に負担がかかっていないかなどに気をつけましょう。
参考 抱っこして歩くと赤ちゃんがリラックスする仕組みの一端を解明-経験則を科学的に証明、子育ての新たな指針に-
あやし方その5 抱っこでスクワット
抱っこで揺らす、抱っこで歩くではおさまらなくなってきた、生後2カ月くらいの赤ちゃんにおすすめです。太ももやおなかの引き締め効果も狙えます。
方法 赤ちゃんをしっかり抱っこしてスクワットします。まだ首をしっかり支えてあげたい時期なので、横抱きやC字型抱っこのほうがやりやすいでしょう。首がすわったら対面の縦抱きにして、顔を見ながらすると楽しそうです。美容効果を重視したかったら、①足は肩幅に広げる ②つま先と膝の方向を合わせる ③膝がつま先よりも前に出ないようにする この3つを心がけて、ゆっくりするといいそうですよ。スクワットが不安定だったら、壁に背中をつけて行う方法もあります。
Point 赤ちゃんに振り回されている、抱っこさせられている、と思うとつらく感じるもの。私の美容と健康に効くスクワットを赤ちゃんに手伝ってもらっていると考えると、ちょっとだけ気分が変わるんじゃないでしょうか。
ここに注意!! 運動中の転落や転倒がいちばんの心配。壁などにぶつけたりしないように注意しましょう。ちゃんと顔をみて、話しかけながらするといいですよ。
あやし方その6 バランスボールで抱っこ
バランスボールを使った抱っこ。バランスボールが必要ですが、座ってあやせる、寝かしつけ効果が高いと評判です。
方法 赤ちゃんをしっかり抱っこしてバランスボールに座り、腰を動かして揺らします。赤ちゃんを抱っこしたまま行う本格的なエクササイズもありますが、首すわり前だったり、ママがバランスボールに慣れないうちは危険だと思います。足が地面にしっかりつくサイズのものを選び、いすがわりに座って揺する程度から始めるのがおすすめです。
Point 首がすわって身体がしっかりしてきたら、バランスボールをはずませるように上下動するとさらに喜びます。
ここに注意!! 落下事故や転倒事故に注意しましょう。赤ちゃんの脳はデリケート。強く揺さぶり続けたり、激しく揺すらないよう気をつけて。赤ちゃんがご機嫌になる、眠れる程度なら大丈夫ですが、極端に激しすぎる動きは揺さぶられっ子症候群の原因になります。(揺さぶられっ子症候群についてもう少し知りたい方はこちら)
グッズ バランスボールは、足をついたとき膝が90度になるのが理想的。サイズはメーカーごとに違いますから、自分の身長に合ったものを選びましょう。価格は1000円程度から7000円くらい。いすタイプになると1万円~1万4000円くらいです。破れたときに破裂せず空気がゆっくり抜けるアンチバーストタイプがおすすめです。
補足
※モロー反射 頭が急にガクッと落ちたときや大きな音などの強い刺激があったとき、自分の意思とは関係なく、手足をビクッと動かして何かにつかまろうとするような動きをする反応をいいます。うまれつき、ある刺激に対して決まった反応をする新生児反射(原始反射)のひとつです。
ヒトの祖先が樹上生活をしていて、落下の危険性があるときに枝をつかんで回避していたころのなごりだそうです。あって当然の反応なので、本来は抑える必要はありません。生後4カ月ごろには消失します。
※乳幼児突然死症候群(SIDS) 窒息などの事故や呼吸器・循環器の異常、感染症などの病気とは関係なく、睡眠中に突然死する症例をいいます。赤ちゃんは呼吸中枢が未熟なので、睡眠中に無呼吸状態になったとき、覚醒反応が遅れ、再び呼吸するしくみがきちんと働かないことがあります。そのために呼吸が止まったまま、死に至ると考えられています。
うつぶせ寝の姿勢は赤ちゃんの覚醒反応を遅らせてしまうことが多く、それが仰向けよりも突然死がおきやすい要因となっています。生後2~6カ月ごろに多く、新生児には少ないことから、ママがそばにいて頻繁にお世話しているような環境が突然死の予防になっていると思われます。保育者(両親)が喫煙者、母乳ではなくミルクを飲んでいる場合も、発生頻度が高くなります。(個人的な考えですが、母乳はミルクよりも授乳間隔があかないので、頻繁なお世話が必要です。それが予防につながっているのではと思います。)
「添い寝」の危険性も指摘されています。ただ、海外の「添い寝」は「同じベッドに寝る」という意味。住宅事情などの理由で、大人と同じやわらかいベッドに赤ちゃんを寝かせているだけのことが多く、寝かせたままそばを離れるなどの問題も。ベビー布団と並べて布団を敷き、ママが横で眠りながら見守る「添い寝」はむしろ抑制効果があるのではという意見もあります。下記を参考にしてください。
参考
※揺さぶられっ子症候群 生後6カ月未満の赤ちゃんを激しく揺さぶることでおきる眼底出血や頭蓋内出血、脳挫傷などの外傷をいいます。英語ではShaken Baby Syndrome。揺らすというより、激しく振る、かき回すような激しい動きです。アメリカでは子どもを叱るときに肩をつかんで強く揺さぶる習慣があるそうです。身体がしっかりした幼児は大丈夫ですが、首すわり前の赤ちゃんを同じように強く揺さぶると、脳が頭蓋骨にぶつかるなどで大きなダメージに。あやし中の事故というより、児童虐待の結果であることが多いです。 揺さぶられっこ症候群が起きる目安としては、頭を2秒間に5~6回ゆする、体を20分間左右に揺らしつづける、高い高いで空中に上げてキャッチを繰り返す、など。揺らし方が常識の範囲内で、赤ちゃんが機嫌よくしているなら大丈夫です。